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2011年5月18日 (水)

95%以上の確率

 5月27日の手術まであと10日をきった。どれほど不安な日々を送るだろうと思っていたが、この1週間ほどはだいぶ落ち着いている。 手術を受けることは仕方ないと、あきらめることができたからだ。それは、知人の医師の方々が真摯なアドバイスをくれたおかげだった。それを 書いておきたい。

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 5月7日、咳を治すための抗生剤を3日分もらった。もし肺の影が感染症に起因するなら、抗生剤を飲むことで影も小さくなるかもしれないと聞いたので、3日分を2日で飲んでしまった。

 5月9日は、朝から順天堂医院へ。咳はだいぶ治まった。造影CT検査(造影剤(X線を通過させにくいヨウ素を含む液体)を静脈注射 しながらのCT)をうける。この1ヶ月間にCTを受けるのは3回目だ。震災後は1μSv/hの被爆を気にしていたのに、この3回で何万μSvの放射線を浴びたのだろう。
 その後すぐに、呼吸器内科のH医師の診察を受ける。待ちに待ったPETの検査結果が出ているはずだった。PETが陰性だったら 、結核QFTの陽性とあわせて、結核の疑いがでてくる。診察を受ける前の僕は、きっとそうなると信じこんでいた。
 H医師はこう切りだした。
「・・・造影CTを見るまでもなく、残念なことにですね・・・、(PET検査によるブドウ糖の)この集積は肺ガンを強く疑います。・・・」
 えっ?、「残念なことに」?、いったい何が起きたんだ? わけがわからず、思考が停止してしまった。
 PETで仮に陽性になったとしても、それはこれまでのガンの疑いを追認する程度だと思っていた。だが、H医師の口調は違っていた。 ガンの可能性がかなり強まったという。PET結果のどこからそれがわかったのか質問したが、よく理解できなかった。
 さらに悪いことに、肺門(肺の入口)近くのリンパ節への転移も疑われるという。なんということだろうか! それではガンの病期の初期(Ⅰ期)ではなく、Ⅱ期になってしまうではないか。Ⅰ期とⅡ期では生存率に大きな差があることを、本で読んでいた。
 わかりやすい言葉がほしくて、こう聞いた。
 「何割ぐらいの確率で、ガンなのでしょうか?」
 「もう95%以上です・・・」
 それを聞いて、初めて事の重大さがわかった。それ以上質問する必要は、なくなった。
 H医師は言った。
 「これで‘内科の診察’は終了します」
 この病院で最初に診てもらったH医師をできるだけ信頼しようと思って、これまで通院してきた。その医師に見放されたような、裏切られたような思いがした。あっけない「終了」だった。全身から力が抜けてゆくようだった。

 その後、呼吸器外科のS教授の診察を待つ。S教授の診察は2回目だが、今日も20人以上の患者が待っていた。有名な医師なのだ。ようやく順番が回ってきて、あわてて診察室へ入った。
 S教授はPETの結果を見ながらこう説明した。
「基本的に肺ガンですね、やっぱり」
 その理由の1つは、腫瘤付近のSUV(Standard Uptake Value:標準摂取率)という値が7.8もあるからだという。通常の細胞はもっと低く、1.5以上あるとガンを疑うらしい。肺門近くのリンパ節のSUVは2.5程度で、やはり転移の可能性があるという。
「ガンでないという画像ではないし、極めて典型的というわけでもない。これ以上はいくら議論してもしょうがないのです。胸を開いてみなければわからない。治療戦略上のオプションはあまりないですよ」
 さらにこうつけ加えた。
「手術でⅡ期かⅢ期かを確かめます。そしてきれいにとることです」
 Ⅰ期かⅡ期かではなく、Ⅱ期かⅢ期!かなのか。それが現実なのか。Ⅲ期の生存率は3割程度しかない。
 僕が不安な顔をすると、
「手術は私がやります。できるだけ山の仕事が続けられるように配慮しますよ。(ガンの確定診断をするための)生検はできるだけ小さくとります。1年以上かかるでしょうが、山にも復帰できると思いますよ」
と言ってくださった。
 手術までのあいだ検査が続くのだろうと思って聞くと、
「ほかの検査はいりません。もう手術まで来なくていいですよ」とのことだった。
 肺を切る手術をするというのに、ずいぶん簡単なものだ。4回診察を受けたH医師は多少信頼できるようになっていたが、2回の診察で数十分話をしただけのS教授を信頼しろというのは難しい。本当にこのまま手術なのかと思っているうちに、診察は終わってしまった。
 待合室で呆然としていると、セカンドオピニオンについて何も話さかったことに気づく。看護婦さんに事情を話して、もう一度診察室へ入れてもらった。
 S教授は言った。
「セカンドオピニオンを受けても迷うだけで、お薦めしません」
 たくさんの患者さんが待つなか、多くの言葉を使ってその理由を説明してくれた。だが、「心配なら紹介状を書きましょう」とは最後まで言ってくれなかった。それが患者を思う本心からなのか、別の理由からなのか、肺ガンという宣告をされた僕にはわからなかった。
 診察費はすべてあわせて、3割負担で10,100円。こちらに選択権はなく、言われた金額を払うだけだ。高いか安いかもわからない。

 フラフラしながら病院を出る。気持ちを落ちつけたくて、途中のベンチに座りこんだ。ジュースを飲みながら30分近くボーっとした。「アーッ」とか「ウーッ」とか、ため息交じりの声を何度も上げていただろう。脱力感で立ち上がれなかった。
 1時間以上かけて帰宅すると、すっかり疲れていた。妻に簡単に報告して、現実から逃れるように布団に入った。

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